第一章 『タリス』 ４
一行は本格的な旅路へと向かい第一歩を歩み始めた。 スティン 「はて オブラダと言えばアクアスローだが・・・ どこかで船に乗らねばいかんな。」 ミム 「それでしたらルーフ国の貿易港ペルミに行ってみてはどうかしら？」 タクラム 「うん ペルミなら大洋横断船も出てるはずだよ」 スティン 「ここから歩くとして、１カ月はかかるな。」 タクラム 「だいじょうぶっ！」（青影のマネっ（笑）） タクラムは得意そうに鼻をヒクヒクさせながら大空を仰いで叫んだ 「プリーーーーーーーム ！！」 「エルシー−−ラ！！」 「ファミーーーーーーユ！！」 「マローーーーーーーーナ！！」 すると遠くから甲高い声が響いてきた。 『キルルルルルル』 スティン 「飛竜か？！！」 タクラム 「そうさ おいらの友達さ、こいつらならおじさん達を乗っけても 一日 ３００Kerm（1000Bermが1Kerm）位は飛べるさ。」 タリス 「では海を越せるのか？！」 タクラム 「無茶言うなよ 彼らだけなら越せるだろうけどね、人を乗せると なると 一度に５０Kerm位しか飛べないよ。」 飛竜は輪を描くように、目の前の広場に舞い降りてきた。 身の丈は2500Merm（1000Mermが1Berm）翼長が5000Merm位だ。 さほど竜としては大きくない様なので、１人しか乗れないだろう。 タクラムは続けた。 タクラム 「こいつらだけなら8000Berm位の高さは飛べるけどね、でもそれじゃ おいらたちが高山病にかかっちまうからせいぜい高くても3000Berm 位しか上昇できないだろ、するとあまり大きな気流に乗れないからね。 するってぇとこいつらはいつも羽ばたいてなきゃいけないだろ。 だからそんなに長くは飛んでられないのさ。」 スティン 「ふむ あい判った。では早速移動するとしよう。 山を越して200Kermも飛べばコリーの町がある。」 ミム 「そうね、日没までには着けるわね」 タクラム 「そうと決まればみんな竜に乗っておくれ。」 一行はそれぞれの竜に跨りタクラムの号令一過、飛竜は空高く 舞い上がった。 タクラムは中でも一際目立つ純白の竜プリ−ムに跨り先頭を駈けた。 タクラム 「とりあえず 『風の背骨』を越えて麓で竜を休ませよう。」 スティンの乗ったマローナのそばに寄せて話した。 スティン 「そうだな、麓に大きな池が在ったはずだ。」 一行は風の背骨の最高峰、『サリマ山』の横を通過した。 背骨を越したとき、一行の眼下には遥か向こうに、地平線と重なる 海が見えた。 ペルミはその海のもう少し向こう側に当たる半島の突端近くの町だ。 ここからは視認する事はできないが、当面の目的地コリーの町は （目のいい者なら）麓から続く街道沿いに小さくその姿を見る事が出来る。 もう少し手前に目を向けると、その大きな池が目に入った。 タクラム 「プリーム あそこだあの池で休もう。」 『キュルルル』飛竜は小さくうなずいて急激に降下を始めた。 タリス 「ひゃーー 耳が痛い！！」 さすがに生身の人間にはこの急降下はかなり堪えるようだ。 なにせ2000Kerm近く急降下するわけだから、気圧差はかなりのものだ。 今にも破裂しそうな鼓膜の痛みを感じながら、その池の真ん中にある 小さな小島に降り立った。 タリス 「タクラム、もう少しゆっくり降りてもらえないかい？」 タリスはまだ耳なりの治まらない両耳を抑えながら竜から降りてきた。 タクラム 「はははは ヒューマンってのは結構デリケートなんだね、今度からは 少し時間をかけて降りる事にするよ。」 そう言いながらタクラムは飛竜達を水辺に連れていった。 その時背後のしげみの付近で物音が聞こえた。 スティン 「うむ？ どなたかおられるのかな？」 スティンはしげみの方を向いて尋ねた。 すると しげみの中からドワーフとも見紛うほどの立派な髭をたたえた 初老の男が手に大型のナイフを持って現れた。 それを見てタリスはとっさに剣に手を掛ける。 スティン 「まあ 待てタリス」 剣を握る手を諌めて続けた。 「私達は旅の者だが怪しい者では御座らぬ。 そのナイフを収めてはいただけぬか？」 男 「スタリデルス ライヒット デスタ シュタイゼン」 タリス 「はああぁ？？」 タリスはその男がいきなり発した言葉の意味が全然判らない。 スティンはその言葉を聞き、とっさに剣を抜き、構えた。 スティン 「フォーブの手の者か？！」 男は数秒スティンとにらみ合った末にナイフを腰のシースに収め 話し始めた。 男 「どうやらあんたらはルインの外道では無いみたいだな、失礼した。」 タリス 「ルインの外道？」 タリスはきょとんとしている。 ミム 「あら、おぼっちゃまは何も知らないのね ふふ ルインって言うのはフォーブの首都よ・・・ そしてハイエマル教の聖地でもあるわ」 男 「いや わしゃこの島に昔から住んどるもので、サウミと言う。」 スティン 「そうでしたか、これは突然の訪問失礼いたした。 私は スティン＝ソム＝バレイアと申す。 そして こいつはタリス＝シン＝バレイア、私の息子です。」 剣を収めながら言った。 タクラム 「おいらは タクラム 風の背骨の魔導師さ」 ミム 「私はミムよ 同じく今日風の背骨から降りて来たばかりなの」 サウミは少し驚いた顔をしながらスティンを見つめて言った。 サウミ 「バレイア？！ あの グランの剣豪バレイア殿か？！」 スティン 「いかにも。 剣豪と呼ばれるにはいささか恥ずかしいものがあるが 確かに グランの剣士。 名を覚えていただけるとは光栄に存じます。」 サウミ 「謙遜されますな。 もし お急ぎで無ければわが家でおくつろぎ下され。 粗末ではありますが食事を用意いたしましょう。」 相手がグラン一の剣豪バレイアと知ってか、急にサウミの態度が 一変した。 サウミは 一行を島の中程にある小さな家に案内し、いそいそと 食事の容易を始めた。
