第２章 『ドレイク』２
「俺は知っての通り海賊ドレイク、ドレイク＝フェルナンドだ。
先ずは名前を教えていただこうか？ 高貴な導師殿」ドレイクはその
若者に問いかけた。
「は・・ははは 何でもお見通しなのですね、海賊ドレイクがそんなに
礼儀正しい方だとは知りませんでした。
私の名はマリク、マリク＝アウスレーゼと申します。」
横でルフォイがドレイクに耳打ちした。
「こ、こいつはサリム国第一王子ですよ、国が邪教の侵攻のために
どこかへ落ち延びたと聞きましたがまさかこんなところに・・・」
「どうやら私の正体は知られているようですな。」マリクはすっくと
立ち上がり、マントを翻した。そこには明らかにサリム国ルシャール朝
の王家の紋章「双頭の竜」の刺繍が施されていた。
マリクは続けた「先の魔導師の手合いならば私の力でもなんとか切り抜
けられたやも知れぬが、海賊ドレイク相手では刃もたたぬ。私に掛けら
れたこの賞金好きにするがよい。
ただし・・・・」
「何だ？！」
「一つだけ願いを聞き入れていただきたい。」
「言って見ろ」ドレイクは腕を深く組み問いかけた。
「教祖シェルミラードを葬り去ってほしい。」
ドレイクは１テンポ間を開けて大笑いした。
「はっ はははははははは 奴を倒すだと？！ ありゃこの世ならぬ
化け物だと聞き及んだ。それを倒せと言うか。」
「ふざけてはおらぬ。」 マリクは顔をしかめて憤慨した。
「いや、確かにあ奴は化け物かも知れぬが、一つだけその奇跡を封印
する方法がある事が判った。」マリクは少し気を沈めて事の次第を
話し始めた。
「この海のどこかに魔を無に帰す巨大な宝玉が有るという。その力を
借りればあ奴とて不死身ではいられぬはず。事が済めばその宝玉も
あなたが自由にしていただいて結構。最期の頼み聞き入れていただ
きたい。」
そうして彼はマントをデッキに広げその後ろに膝まづいた。
それを見たドレイクはすっくと立ち上がり、邪教団戦闘艦を指さし
言った。
「マリク王子！ 国を追われた惜念の思い見せてみよ。」
「存分に・・・」、マリクはそう告げ傷ついた体を奮い立たせた。
「パイクっ！ 総員待避！ 戦闘艦から離れろ」
ドレイクの命令に戦闘艦から、手下達は海賊船に飛び移り船を離した。
それを見届けたマリクは中空に大きく手を掲げ呪文を詠唱した
アトモス ロード フィルギオム ディ シャンク ディエス アス エルフォイ
「天空の主よその腕に雷鎚もて我が眼前の敵を消滅せよ
フィルギアス カイサー フィアーース !!
雷 帝 降 臨 ！！」
突然 空が割れ数千の雷鎚が戦闘艦を襲い、一瞬にしてその鋼鉄の
船を切り裂いたかと思うとみるみる内に大きな渦を描いて海底へと
その巨体を沈めて行った。
マリクの体は全精力を使い果たしたかのようにフラリと崩れ落ちた。
ドレイクはその弱りきった体をその太い腕で抱き留めた。
「見届けたぞマリク王子。貴公の望み聞き届けようぞ。
だが、貴公もここで果て落ちては心中納まらぬだろう。その望み叶う
まで貴公の命は俺が預かる。貴公も自身の手で討ち取りたいだろう。」
そう言いながらドレイクはマリクに肩を貸し立ち上がらせて笑いかけた。
「ルフォイ 船に案内しろ。今よりマリクは我が盟友だ。
出航準備！ 引き上げるぞ」
